いかれた慕情

僕の天使マリ

意味を求めて無意味なものがない

昨日友人と急遽飲みに行くことになって、安居酒屋でクダを巻いた。ハワイ帰りの友人にお土産をたくさん貰って、近況を話し合って、凍結した道路でズッコけそうになりながら二軒目を探していたらケーキ屋の上にマッサージ屋があった。30分3000円。

8時間に及ぶフライト後の友人と、多忙で疲労が溜まっていた私たちは「アリじゃない?」と喜び勇んで入ってみた。

扉を開けた瞬間、店の奥で茶碗と箸を持ち立っている半裸のフィリピーナと目があった。

仰天して固まっていると、奥の方からこれまたスリップにバスローブを羽織った巨乳のフィリピーナがズンズンやってきて、「ドゾー」と言った。

店の中は暖かかった。寒さと疲労が極限のところまできていた私たちは「ドゾー」と言われるまま、小さなソファーに誘われた。

ニッコリしながら「熱いお茶飲む?」と聞かれたので、即首を縦に降る。

出てきた熱いお茶は今のところ今年で一番美味しかった。

 

店内は異様なほど薄暗く、艶かしいムードが漂っていた。

熱いお茶を啜りながら、「完全に場所を間違えてしまった」「でももう引き返せないね」と友人と脳内で会話した。

巨乳フィリピーナが胸をたゆんたゆんと揺らしながら、借りてきた猫のような私たちに「30分3000円か50分5000円、どーする」と聞いてくる。どうするべきか。たった20分の差であれど、「一体何が起こるか分からない上での20分」だ。

私は元来マッサージが大好きなので、普段だったら1時間くらいはやってもらう。マッサージや整体に関しては中国人が殊更に良い。あの容赦ない力加減がちょうどいいのでクセになる。

しかしここはエッチな店だ。25歳の女はエッチな店に来たことがない。こんな駅徒歩0分の立地で、エッチな店があっていいのか。全然関係ない事を考えている間、友人が機転を効かせて「あー、手持ちが3000円しかないから30分でいい?」と聞いてきた。なんてファインプレーだろう。

「じゃあ30分で!」と言ってお茶を飲み干して、各々が別の部屋に案内される。

友人の担当が巨乳フィリピーナで、私の担当は半裸で賄いを食べていたフィリピーナだ。

 

個室に通されて、賄いフィリピーナと2人きりになる。上着を脱ぎ、他も「脱いで」と言われるので、セーターを脱ぎ、スキニーを脱いで、これでいいかと表情を伺ったら、妖しく笑いながら上の服とタイツと靴下も脱がされた。

半裸の女に半裸にされた。そしてうつ伏せになって薄いタオルをかけられた。

目を瞑ると、とってつけたように異国の音楽が流れ始めた。マンドリンの音と情熱的なボーカル。「こんなことになるとは…」と思いながらも為すすべもなく、されるがままにマッサージされた。

隣の友人の部屋から急に「パンパンパンパン!!!」と皮膚と皮膚がぶつかり合う音が聞こえてくる。不安になる。

私は私でうつ伏せでひたすらにマッサージされていたのだが、首のコリをほぐす段階で急に賄いフィリピーナが私の尻の上に腰を下ろした。

「半裸の」と先述しているが、どの程度かと言うとセクシーなスリップの下に丸見えのパンツを履いている状態だ。

私も下半身はパンツ1枚だったので(そうされたので)、尻・パンツ・薄いタオル・パンツ・尻みたいな感じで、布3枚を隔てているとは言え、布3枚しか隔てていないのだ。人の尻の質感をこんな形で味わう羽目になるとは。

多分男性客だったらこのギリギリのラインで攻めてくるのであろう場面だが、明らかに場違いの小娘相手なので完全に私の尻の上で休んでいた。

時折、私たちを揉みながら隣室同士、母国の言葉で話している。

 

やがて30分が経ち、最後に親の仇かと思うほど背中をパンパンパンパン!!!と激しく叩かれて終了した。服を着ている最中、また「熱いお茶いる?」と勧められたので貰うことにした。

 

入店した時と同じソファーでお茶を飲み、ベッドメイクをする女達を眺めていた。

無事に帰ってきた友人と黙ってお茶を啜る。会計でぼったくられるかもなあとボンヤリ思っていたら、提示通りの金額だった。無事に会計が終わった瞬間、友人が「2000円になっちゃった」と漏らした。気が緩むのが早い。

 

靴を履いて店を出て、階段を駆け下りて地上に降りた瞬間笑いが止まらなくて、「私たち馬鹿だね〜」と転げ回った。

検索するとバリバリのメンズエステ店だった。「ヌキなし」と書いてあるということは「ヌキあり」と同じ世界線に立っているということだ。

 

三次会のお茶をしながら感想を語り合っている時、驚愕の事実が発覚した。

私が笑いすぎて息も絶え絶えに「まず、部屋に入ったら服脱がされたでしょ?」と言うや否や「えっ?」と言う。

「いや、服もタイツも脱がされて上はヒートテックで下はパンツだったよね?」と聞くと、彼女は「パジャマに着替えたよ」と至極当たり前のように答えた。なんということだろう。着替えなど貰えずに全てを諦めて初対面の女に半裸にされたというのに。私だけ「羅生門」の老婆のように身ぐるみ剥がされた。

無慈悲な待遇にまた爆笑しながら、最終的には「でもマッサージの腕、普通に良かったよね」という賞賛に変わっていた。

こんなに笑ったのは久しぶりだと思う。

 

馬鹿な子供の気持ちで、あの店の小さな水槽に入った出目金になってみたいと思った。