うわごと

僕のマリ

いつか動かなくなる時まで遊んでね

 

9月1日日曜日、晴れ。
早起きしていつもより少し丁寧に身支度をして電車に乗る。井の頭線小田急線ともに久々だ。長いスカートを踏んづけそうになりながら乗り換えて、着いたのは世田谷代田。
初めて降りる駅だ。降り立つとほぼ閑静な住宅街で、鎌倉通りを一直線に歩く。
十分経たずして着いたのは「邪宗門」。
きょうは喫茶店観察家・飯塚めりさんとデートなのである。
めりさんとは公私ともに繋がりがあり、わたしが彼女の作品を好きな影響もあって、仲良くさせていただいている。

荻窪にある邪宗門は何度か行ったことがあるものの、世田谷邪宗門は初めて。お店の佇まいが渋い。

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待ち合わせの時間より少し前についたので、一足先に店内へ。
もう、店内がすごい。火縄銃や踏み絵が飾ってある。これってこんなカジュアルに飾るものだっただろうか。先客は世田谷ボーイっぽいお兄さん一人。
マスターが持ってきてくれたお冷やに口をつけながらメニューを眺める。
メニュー自体はそんなに多くないものの、「あんみつコーヒー」などの謎メニューに思考を巡らせる。全然想像はつかないがおすすめのようだ。

めりさんが到着。お会いするのは二週間ぶりだろうか?
秋らしいキャメルのワンピースでかわいい…と感激した。もう9月だということを大音量の蝉の声で忘れていた。
メニューを眺め2人でウンウンうなる。あんみつコーヒーをマスターにおすすめされる。
「どんなものなんですか?」と聞くと、写真を見せてくれた。あんみつに熱いコーヒーをかけて食べるらしい。アフォガートみたいだった。

悩んだ末、わたしはレアチーズケーキとアイスコーヒー、めりさんはアイスウィンナーコーヒーとトーストを注文した。マスターおすすめのあんみつコーヒーをパスしてしまった後ろめたさを感じる。 申し訳ないが気分ではなかったのだ。
注文したものが運ばれてきたとき、めりさんがスケッチブックを取り出してササササとスケッチを始めた。キター! と叫びだしたいのを抑え、しばし眺める。二人とも違うものを頼んだので見栄えもいい。アイスコーヒーは氷がいっぱい入ったグラスに熱々のコーヒーを目の前で注がれるスタイル。こういうのはテン ションが上がるので好きだ。おいしそうだった。

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そして一口飲んでびっくり、加糖だった。そこから加糖アイスコーヒー談義。昔ながらの店だからか(加糖が流行っていた時代があった説)、 それとも、関西圏の喫茶店はアイスコーヒーといえば加糖が多いので、マスターが関西人なのかとか、しばし喫茶談義に興じる。

静かにおしゃべりをしていたらマスターがおもむろに近づいてきた 。
壁に飾ってあるものの説明が始まる。
「これね、踏み絵」「へえー、本当に踏まれていたんですか?」「 ……」
あろうことか無視された。ええ…と思ったけれど、わたしの声は小さくて聞き取りづらいとよく言われるので仕方ないことだ。
それから、お店が舞台となったアニメの画像が印刷されている紙を見せられたり、新聞の切り抜きを見せられたりした。わたしもめりさんもこういうのは黙って受け止めるタイプだった。そうですか、 なるほど、などと言いながら甘いアイスコーヒーを飲む。

めりさんが「もう一軒どうですか?」と言ってくださったので、喜んでついて行く。下北沢までお散歩がてら歩いた。いい感じのカフェがたくさんあり、めりさんいわく「需要が高いのでしょう」 とのこと。世田谷の人はきっと裕福で文化的な暮らしをし ている。
そうして行き着いたのは「花泥棒」。めりさんがいくつか提案してくださったときに、名前が最高だったのでそこにしてもらった。 13時前に入店して、お客さんはちらほら。 ここは建築がすごかった。席がちょっとした迷路のようになっていて、どこに座ろうか悩む。窓際に座って、人々の往来を眺める。

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今度ゲストで出るイベントの相談、文学フリマの話、凄い喫茶店の話をした。凄い喫茶店というのは本当に凄くて、どう凄いのかはあまりここでは書けないので、直接聞いてください。ヤバい店を紹介する冊子を作ってみたいなと思った。それとは関係なく、わたしの好きな喫茶店西荻窪のそれいゆと高円寺の七ツ森。

お茶をしていたらだんだん混んできたので、下北をぶらぶらすることに。
日曜日のせいもあってか、人が多かった。二十歳くらいの頃はバンドをやってい た関係で週に一回くらいは下北に来ていたけれど、 ここ数年は全く足を踏み入れていない。駅前は再開発でずいぶん変わっていた。駅の近くのセブンイレブンの店の前に、「セブンアンドアイフォールディングス」のロゴの形に刈り取られた植え込みを発見して爆笑した。

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散歩しながら、「『ネグラ』っていう喫茶店に行ってみたいんです 」とさりげなく言ったら一緒に行ってくださることになった。うれしい。駅近だったので来た道を戻り、奥まった場所にある「喫茶ネグラ」にたどり着いた。三組待ちだったので、近くで時間をつぶすことに。
無印良品に行きたいです」とリクエストして駅前の無印へ。無印大好き。文房具は普段あまり使わないけれど魅力的な商品が多いので、つい買ってしまう。適当なノートがほしかったので雑記帳を買 った。50円しなかったと思う。筆箱やカードケース、携帯用の除光液(あまり売っていない!)などを購入。ほんとうはタオルや収納道具も買いたかったけれど荷物になるので我慢。
頃合いを見計らってネグラへ戻る。ちょうど空いたところでラッキーだった。知り合いの女の子が働いているので、その子に会えてよかった。写真が上手な子で、ZINEも出している。
ネグラでのお目当てはクリームソーダ。メニューを見るととにかくいろんな色があって悩む。ラベンダーと悩んで、スミレのクリームソーダを注文。以前大阪の喫茶店でヴァイオレット・フィズを飲んでからというものの、スミレが大好きになった。 客足は途絶えず、わたしたちがいる頃にはすでに七組待ちになって いてびっくり。みんなネグラをめがけて来るのだろうか。やがて運ばれてきた淡い紫のクリームソーダを見てうっとり。

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頂上にはアラザンが載っていて、グラスにはライムが添えてあった!!!「色に 合わせて果物も変えているのでしょう」と考察した。さくらんぼが載っているものもあったし。
めりさんがまたすごい速さでスケッチされていた。速いだけでなく精度も高いので、見ていてため息が漏れた。ロゴも完全再現していて驚いた 。あまりに緻密に模写されていたの少し笑いが漏れるほど。しばらく文房具の話になり、使っているペンを教えていただいたので近々探してみよう。

よい時間になってので解散して、わたしは野暮用で一旦新宿へ。すぐに終わり、また下北へ戻る。夜は町屋良平さんと高山羽根子さんのトークイベント「「わかる」ことと「おもしろい」こと」 を聴きに行った。高山さんの『カム・ギャザー・ラウンド・ ピープル』の刊行記念のイベント。

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あまり詳しく書くとネタバレになってしまうので書けないけれど、 高山さんが小説を書くときに使っている手法に、町屋さんが「すご ーーーーい!」と感嘆していたのが良かった。お二人とも装丁は編集さんにすべて任せている、と仰っていたのも印象的だった。わたしは本のジャケ買いが好きなので、そういう話を聞けてうれしい。

 

トークはあっという間で、休憩時間にババババーっと質問用紙に記入し、スタッフに渡す。ビールのおかわり、とカウンターに行ったら、先にいたお客さんが安達茉莉子さんのZINEを持っていた!つい、「これ、わたしも欲しいのですが在庫はありますか」と聞いてしまう。狂人っぽい。

かぼすビールとZINEをゲットしてほくほく。わたしの横の席の人は三杯目のワインを飲んでいた。

 

イベントが再開され、今度は質問と感想にお二人が答えてゆくコーナーになった。なんとわたしの書いたものが読み上げられて恥ずかしかった。

なぜ恥ずかしいかというと、町屋さんの魅力について熱く語るオタク構文で書いてしまったからだ。酔っ払ったときの文章は禁止にした方がいい。

 

わたしは町屋さんの作品にみられる感情の機微、および細やかな描写、傷ついたときの表現などがとても好きで、それを読むたびに「ああ、そうだった、この感覚をずっと言葉にしたかったんだ」とみぞおちのあたりがシクシクするのだけれど、そこが良い!!小説の醍醐味!!と熱弁をふるってしまった。

多分耳まで赤くなっていたと思うのだけれど、町屋さんが「感無量です」と仰ってくださったのでほっとした。

 

無事イベントが終わり、サイン会のときに「応援してます」と言えて良かった。オタク脳なので「ああ、僕のマリさん!」と、認知されていることもうれしかった。変な名前で活動していたのが功を奏した瞬間だった。

 

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好きな作家さんにはずっと活動していてほしいので、もっと出版社に葉書を送ったり、人に薦めたりしよう!と意気込んだオタクなのであった。