うわごと

僕のマリ

春を殺して夢は光っている

早朝。帰省の準備をする為に、玄関にだらしなく置かれた大きなキャリーケースを開ける。

中では、はさみやガムテープ、淡い水色のテーブルクロス、プラスチック容器、酒の空き瓶、そして「オー11 僕の天使マリ ばかげた夢」と、マジックで乱雑に書かれたA4の用紙が入り乱れていた。

一週間前の同人誌即売会の余韻が顔を出した。

 

文学フリマ東京、本当にありがとうございました。

色々な人にようやく会えた日だったと思う。

私の本を買う為だけにわざわざ来て頂いた方もいたようで、筆舌に尽くしがたい喜びでいっぱいだった。

画面の向こう側で見ていた人たちが続々と姿を現わにして、不思議な気持ちになった。

細々とやっているこのブログを見てくださっている方が多いようで、嬉しい言葉をたくさん頂く。

わたしが仲良くしているインターネットの人のファンの人まで(くふ王さんや海老沢さんなど)買いに来てくださったりして、SNS、凄い…と絶句した。

 

再三申し上げた通りわたしは人見知りなので、来て頂いた方ともっと上手くお話できたら良かったと悔いている。

ブースでは固い表情をしていたが、終始、本当に嬉しい気持ちでいっぱい。犬だったらずっと尻尾を振っている状態。

 

見本誌を読ませてください、と綺麗な女性がパラパラとページをめくっている時に、その女性に親しげに話しかけながら「1冊ください」と即購入してくださった男性がいた。

その人こそ、こだま著「夫のちんぽが入らない」、爪切男著「死にたい夜にかぎって」の担当編集・高石氏であるということを数日後に知り、西荻窪の喫茶店で震え上がる。

不意にタイムラインに流れてきた自分の本の感想が嬉しくて、何度も何度も反芻している。

 

基本的にはずっと自分のブースにいたので、全然他の人の作品を買えなかったことが悔やまれる…

しかし、10分ほど離席してどうしても欲しかった(&会いたかった)、飯塚めりさんの「喫茶モンスター」のブースへ。

お久しぶりです〜なんてお話をしながら新刊「カフェイン・ガール」を購入、ちゃっかりサインをして頂いた。かわいい、嬉しい…。

その後、めりさんがわたしのブースへ来て一冊買って頂いたので恐縮しっぱなし。ありがとうございます。

 

時間の経過とともに、テーブルに生けてある芍薬の花が開いていく美しさにうっとりした。

売り子の彼女と楽しくおしゃべりしていたらあっという間に終了時刻。

即撤収して高円寺で飲み散らかした。

 

そしてありがたいことに、郵送の希望のお問い合わせが多かったので、友人の助言をもとにネットショップを開設。

現在、東北や関西、九州、沖縄など全国各地から注文がきている。

イベントが終了してから慌ただしく、洗濯すらままならない状態なのでまだ発送ができていない。

週明けには梱包作業に入れると思う。

 

わたしは機械にめっぽう弱い。

Wi-FiBluetoothという概念も正直よく分かっていないレベルのいわゆる「情報弱者」なので、今回パソコンで本を作るのは大変骨の折れる作業であった。

全て自分でやったので、手探りで何度も何度も間違えて転んで、甘ったれの性格がもう嫌だなんて泣き言を垂らしながらもなんとか完成した。

 

決して上手い文章ではない、それでも、誰かひとりの心の琴線に触れることが出来たなら、わたしは報われると思う。

 

会場アナウンスでの「文学フリマ福岡」開催の報せに、ひそかに胸が高鳴った。

故郷をテーマに文章を書きたい。

書きたいことがたくさんある。

わたしはきっと取り憑かれている。それでいい。

 

東京の片隅で、ばかげた夢の続きをみる。

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